184 :RINFONE Ⅱ:2006/05/13(土) 13:20:06 ID:d6nOfoGU0
「何これ?プレミアもん?」
「いや、見たことないけど…この置物買おうかな」
まぁ、確かに何とも言えない落ち着いた色合いのこの置物、オブジェクトとしては悪くないかもしれない。
俺は「安かったら買っちゃえば」と言った。
レジにその正20面体を持って行く。しょぼくれたジイさんが古本を読みながら座っていた。
「すいません、これいくらですか?」
その時、俺は見逃さなかった。ジイさんが古本から目線を上げ、正20面体を見た時の表情を。
驚愕、としか表現出来ないような表情を一瞬顔に浮かべ、すぐさま普通のジイさんの表情になった。
「あっ、あぁ…これね…えーっと、いくらだったかな。ちょ、ちょっと待っててくれる?」
そう言うとジイさんは、奥の部屋(おそらく自宅兼)に入っていった。
奥さんらしき老女と、何か言い争っているのが断片的に聞こえた。
やがて、ジイさんが1枚の黄ばんだ紙切れを持ってきた。
「それはね、いわゆる玩具の1つでね。リンフォンって名前で。この説明書に詳しい事が書いてあるんだけど」
ジイさんがそう言って、黄ばんだ汚らしい紙を広げた。随分と古いものらしい。
紙には例の正20面体の絵に『RINFONE(リンフォン)』と書かれており、
それが『熊』→『鷹』→『魚』に変形する経緯が絵で描かれていた。
わけの分からない言語も添えてあった。ジイさんが言うには、ラテン語と英語で書かれているらしい。
「この様に、この置物が色んな動物に変形出来るんだよ。
まず、リンフォンを両手で包み込み、おにぎりを握るように撫で回してごらん」
彼女は言われるがままに、リンフォンを両手で包み、握る様に撫で回した。
すると「カチッ」と言う音がして、正20面体の面の1部が隆起したのだ。
次のページへ続く
この記事が気に入ったら
いいね!しよう