418 :かおる :02/02/07 00:48
マネキンは真っ赤なトレーナーを着て帽子を被っていました。
不謹慎ですが、さっきみたおばさんが身につけていたものよりよほど上等な物のように思えました。
「これ・・・」
S子と私は唖然としてF美を見ましたが、彼女は別段意外なふうでもなく、
マネキンに近寄ると、帽子の角度をちょっと触って調節しました。
その手つきを見ていて私は鳥肌が立ちました。
「かっこいいでしょう」
F美が言いましたが、何だか抑揚のない口調でした。
その大して嬉しそうでもない言い方が、よけいにぞっと感じました。
419 :かおる :02/02/07 00:50
「ようこそいらっしゃい」と言いながら、トレーにケーキと紅茶を乗せたおばさんが入ってきて、空気が救われた感じになりました。
私と同じく場をもてあましていたのでしょう、S子が手を伸ばしお皿を座卓の上に並べました。
私も手伝おうとしたのですが、お皿が全部で4つありました。
あれ、おばさんも食べるのかなと思い、ふと手が止まりました。
その時、おばさんがケーキと紅茶のお皿を取ると、にこにこと笑ったままF美の机の上に置きました。
そこはマネキンのすぐそばでした。
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