やがて電車が轟音をたててホームにすべりこんでき、ドアが開いた。
乗り降りする人々を見ながら、私はようやく腰を上げた。腰痛がすごい。
フラフラと乗降口に向かう。体中が痛む。あの電車にのれば……
そして乗降口に手をかけたとき、車中から鬼のような顔をした老婆が突進してきた。
どしん!
私はふっとばされホームに転がった。老婆もよろけたが、再度襲ってきた。
私は老婆と取っ組み合いの喧嘩を始めた。
悲しいかな、相手は老婆なのに私の手には力がなかった。
「やめろ!やめてくれ!俺はあの電車にのらないといけないんだ!」
「なぜじゃ!?なぜじゃ!?」
老婆は私にまたがり顔をわしづかみにして、地面に抑えつけながら聞いた。
「りょ…旅館にいけなくなってしまう!」
やがて駅員たちがかけつけ、私たちは引き離された。
電車はいってしまっていた。私は立ち上がることも出来ず、人だかりの中心で座りこんでいた。
やがて引き離された老婆が、息をととのえながら言った。
「おぬしは引かれておる。危なかった」
そして老婆は去っていった。
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