でも私が「母は“お兄ちゃんは優しい子だから、父が独りになるとかわいそうだと言って残った”と
言ってたよ」と言うと、真顔になって、泣き出した。
でも五分くらいすると、あれ、なんで何も言わないの?みたいな顔つきで
私の方をチラッチラっと見始めた。
それを見た途端、なんだか全部どうでもよくなって、自分の分だけ払って帰った。
兄の話がどこまで本当かわからない。
さすがにつばを吐いたのは信じがたいが、
嘘だとしてもなんでそんな嘘をつくのか見当もつかないので、どうでもいい。
ただ兄の意思で父のもとに残ったのは本当らしいし、兄は香典一つ持ってきていなかった。
線香をあげたいとも言わなかったし、お墓の場所も聞かなかった。
漠然と持っていた兄への憧れがきれいさっぱり冷めて、会ってよかったのかどうか複雑だ。
綺麗サッパリ縁を断ち切るきっかけだったから、良かったんじゃない?
血の繋がりがあってもあるのは血の繋がりだけ。
何も言わないの?=残った財産を俺に分けてくれるって話し始めてくれないの?って意味かな。
女手が欲しくて、「これからは家族だよ」みたいなノリを期待したのかと
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