
それでも朝7時。
自堕落な俺には、十分早い。
おぼろげな視界に入ってきたのは、スーツにエプロンのイト子の後姿。
再びポニテにまとめられた髪。
生まれて初めて、うなじって色っぽいんだと感じた。
小刻みにお尻を揺らしながら、台所で朝食を作っている後ろ姿にぼーっと見とれていると、
「俺くん起きた? 今、朝ごはんできるからね。」
と、振り向きもせずに声かけられた。
後ろにも目が付いてるのかとびっくりして目が完全に覚め、冷や汗が出た。
ちゃぶ台に味噌汁と卵焼きとを並べながら、
「私、これ食べたら出るけど、俺くんは?」
とか聞かれた。
「俺も、夕方バイトに出る。だから、これ。」と、合鍵を渡した。
「うん、わかった。何時頃帰ってくる?」
「遅くなるから。先に寝てていいよ、風呂も部屋も好きに使っていいから。」
目を合わさないように、朝食を並べていく手を見ていた。
「わかった。気をつけて行ってきてね。」
「ありがとう、イト子さんもね。」
久々に暖かい朝食を食べた。めちゃ美味しかった。
手早く朝食を済ませると、イト子は出かける準備をし始めた。俺はわざと、ゆっくりゆっくり朝食を食べた。
不思議な良い香りを残して玄関から出かけていくイト子を見送り、朝食の洗い物を済ませた後、イト子が寝ていた部屋の押入れ
の奥にしまいこんだ、けしからん本を引っ張り出してきた。
しかし、見慣れたはずのけしからん本の女性が、すべてイト子に見えてしまった。
悪魔め!。いや、女神・・・女神さま。
いやいや、俺のうちは仏教だよな。
仏教にも天使っているのかな??
目を閉じると、けしからん本と同じポーズで微笑むイト子が出現する。
やっぱり悪魔だ。
もう、何も手に付かなくなり、何もかも放り投げ、逃げ出したくなった。
次のページへ続く
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
