
高校生(♂)の家庭教師が当時のバイト。
コンビニなんかまだまだ無かった頃、大学生のやるバイトは、夏休みの土方か家庭教師と相場が決まっていた。
デブだけど頭の回転が速い俺の教え子は、もうすぐ母校になる俺と同じ大学を目指していた。
既に高校のカリキュラムでやるべき所は終え、自分で勉強してわからないところにしるしを付けて、週に二度来る俺に質問をぶ
つけてくるのが俺たちのやり方。
非常にできの良い生徒だったし、楽な割りに自給が良かった。
親に挨拶して、我が教え子の部屋をノックして中に入る。
いつも身奇麗にしている母親も、今日は色褪せて見える。人間って現金なものだ。
「こんばんは、先生。これお願いします。」と、ノートを開いて差し出してくる。
「こんばんは、生徒くん。どれどれ?」
ノートを見ながらゆっくりと思考に沈んで行く・・・はずが。
なんだこれは。
考えれば考えるほど、わからなくなる。
知っている式のはずなのに。
思い浮かぶのは、イト子の脚、うなじ、お尻。
消えろ。頼む、消えてくれ。
教科書・参考書を駆使し、ようやく解にたどり着くも、いつもの俺ではないのを敏感に感じ取っていた生徒君。
「なんかあったの? 先生。」
「・・・・ちょっと調子悪いかな。」
また問題に取り掛かるも、眠気覚ましの紅茶を母親が持ってきたとき、俺はついにギブアップした。
「すみません、今日は少し体調が悪いみたいで・・・早めに帰らせてもらいます、今日の分のバイト代は辞退しますから。」
「あら? 先生、お風邪でも? 暖かくして下さいね。お帰りになるなら、せめて電車代位は収めて下さいな。」
ああ、なんて良い親御さんだ。卒業したら感謝状を贈りたい。
電車代より少し多い位の額を恐縮しながら受け取り、足取りも重く帰路へついた。
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