
寝顔がめっちゃ近い。
びっくりして飛び起きた。
ちゃぶだいが大きな音を立てたが、既に片付けられて上には何も載っていなかった。
「ど・・どしたの??」
音にびっくりしてイト子も目を覚ました。
「どしたもこしたも・・・何やってるの。」
「なんか、ストーブ止めた後ね、お布団入ったんだけど寒くって・・・てへへ。」
猫かよ。
女って生き物は、どうしてこんな事ができるんだろう。
しかし、飲みなれない酒を飲んだ俺は、まだ思考がどこか麻痺しているようだ。
現実なのか夢なのか、区別がついていない。
きゅっとイト子を抱き寄せた。
それに応えるように、気持ちよさげに目を閉じるイト子。
気づいたら、唇を重ねていた。
冬晴れの朝の日差しが差し込む中、俺の右腕を枕にして同じ布団で横になっているイト子と目が合った。
「おはよう。」
にっこりと微笑むイト子。
二人とも、布団の中は全裸だ。
「・・・・・・・・夢だと思った。」
思わず口から出た言葉。
「あはは、夢じゃないよ。俺くんの寝顔、かわいかったよ。」
語尾にハートマークが付いている。
もぞもぞと照れながら背中を向けて布団から這い出し、散らばったイト子の下着とパジャマを見て、やっぱり夢じゃないのかと
思いながらストーブに火をともし、服を着た。
イト子は掛け布団に入ったまま、にゅーっと腕だけを伸ばしてパジャマを手につかみ、器用に布団の中でパジャマを着ている。
怒り狂うおじさんの顔が目に浮かぶ。
「・・・・・責任は取る。」
「うん、最初からそのつもりだった。お嫁にもらってくれる?・・・くれるよね?? うふふ。」
イト子の言う”就職活動”とは、何を隠そう、俺への婚活だったのだ。最初から永久就職を決める気で、俺の所へ泊まりに来た
と言う。
イト子の親も俺の親も、後から聞いたらグルだったそうだ。
何のことは無い、俺が取った資格もおじさんは、大先輩で個人事務所を開くほど田舎では成功している。
一人娘を嫁に出すより、跡取りに婿をもらいたがっていたおじさん。
俺(男ばかり3人兄弟の末っ子)がその資格を取った事を知り、婿に迎えるべく刺客を放ったと言う訳だ。
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